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ポール・シャリッツ

ポール・シャリッツ
 

2014/デジタル/85分(カナダ)
  
若すぎる死から長年を経てなお、ポール・シャリッツの残した衝撃は生き続けている。因習を打破する革新者として突出した存在であり、高速のフリッカーや振動、色彩豊かなモザイクなどの手法で知られた。数多く収められたインタビューや証言は、実験映画界の先頭を切って来た世代の声をもまた描き出している。
 

ポール・シャリッツ

アメリカのアヴァンギャルド「実験」映画作家でアーティスト、メディア研究の教授でもあるポール・シャリッツは1943年2月7日にコロラド州デンバーで生まれた。不幸にも1993年7月8日にニューヨーク州バファローの自宅で死亡。彼の息子クリストファーと息子の妻シェリー、3人の孫たちが残された。シャリッツは構造映画の作家として、複数の映写機の使用やフィルムの無限ループなどの技法や、実験的なサウンドトラック、上映という形態の基本様式を意識させるべくフィルムそのものに介入する手法などで知られている。デンバー大学芸術学部で美術学士号を取得。当時は若き画家として知られていたが、すでに高校時代から映画を作っていた。デンバー大で美術を学びつつ、スタン・ブラッケージに師事するようになる。2人はすぐに友人関係を築き、それは生涯にわたって続いた。ブラッケージの実験的な「スクラッチ」映画に見られる、映画の構造を操作する手法の影響はシャリッツの初期作品に明白である。1964年にはブルーミントンのインディアナ大学の修士課程に入学しヴィジュアルデザインを専攻した。修士号取得後、息子のクリストファーと妻のフランシスと共にメリーランド州ボルティモアに移住し、メリーランド・インスティチュート・カレッジ・オブ・アートで教える。その後、オハイオ州イエロースプリングスのアンティオーク大学で教え、同校メディア研究センター設立の立役者となった。1968年に離婚。そのすぐ後、ジェラルド・オグレイディの誘いでバッファロー大学のメディア研究センターに職を得た。当時の同僚には、ジェイムズ・ブルー、ホリス・フランプトン、トニー・バノン、トニー・コンラッド、後にはペーター・ヴァイベルら、実験映画の才能ある新鋭たちが数多くいた。シャリッツの作品は生前すでにかなり認知され、バイカート・ギャラリーやオルブライト=ノックス美術館、ウォーカー・アートセンターやその他の場所で展示が行われ、没後にはホイットニー美術館、MoMA、ポンピドゥー・センター、ルーブル美術館やバッファローのバーチフィールド=ペニー・アートセンターなどでも開催された。なかでも、絵画作品と共に4台のプロジェクターを使用するインスタレーション「シャッター・インターフェイス」を見せたグリーン・ナフタリ・ギャラリーでの展示は、2009年にニューヨークのグッゲンハイム美術館での「ファースト・アニュアル・アート・アワーズ」で年間最優秀個展賞を贈られた。プロジェクター4台を使うインスタレーション「シャッター・インターフェイス」はその後、ワシントンD.C.にあるスミソニアン協会ハーシュホーン美術館に購入され、展示されている。初めは絵画を学び、また理論家として多くの著述を残したシャリッツの作家活動は実に幅広い領域にわたる。初期にはニューヨークでフルクサスの面々と関わりがあったこともそれを証明している。図表から抽象映画のスコア、ファッション・イラスト、そして幻覚的な描画作品まで、彼が紙の上に残した数多くの作品についてはまだ今後、すでに広く知られている他の作品群のなかにしっかりと組み込まれていく必要があるだろう。

クリストファー・シャリッツ, 2010

 

フランソワ・ミロン

1982年に映画制作を始める。もっぱらフィルムの感光(つまり媒体はビデオではなくフィルム)を題材とする。初期の作品には多くの実験映画短編がある。そのすべての作品でフィルムの映像操作技術として彼の習得したオプティカル・プリンティング(映写焼き付け)が使われている。1990年にシカゴ美術館付属美術大学で奨学金を受け、美術修士号を取得。これまで制作した全作品が世界各地の映画祭やその他の様々な機会に上映され、多くの賞を受けることによりアンダーグラウンドでの名声を得ている。その他に、ミュージックビデオや写真作品も手がける。1993年からはモントリオールのメル・ホッペンハイム映画学校で、オプティカル・プリンティングや映画制作全般、フィルムの技術的側面についてなどを教えている。また、全作品のレトロスペクティブ上映がサンフランシスコやハンボルト、モントリオールのシネマ・デュ・パルクやシネマテーク・ケベコワーズなどで開催。2007年にはジェイムズ・ゴールウェイと共同で脚本を書いた35ミリ長編映画 『The 4 th Life』を完成させた。この作品は各国の映画祭で上映され、カナダでは劇場公開された。2008年にはアーケイド・ファイアのアルバム『ネオン・バイブル』のカバーでジュノー賞を受賞。使用された写真は、ミロンが白黒の16ミリフィルムとリバーサルフィルムで撮った映像から抜粋したものである。同年、監督作 『Hymn to Pan』でケベックの芸術・文学評議会から芸術的創造分野におけるグランプリを贈られた。5年の歳月をかけて、伝説的なアヴァンギャルド映画作家ポール・シャリッツを題材に、複雑な構造からなるドキュメンタリー映画を完成させた。
 

上映日

東京 パークタワーホール:4/29 18:45 Rプログラム
東京 イメージフォーラム:5/2 21:15 Rプログラム
京都:5/22 14:40 Rプログラム
横浜:5/30 14:00 Rプログラム
名古屋:6/26 19:00 Rプログラム

 
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