プログラム

アン・デュ・トロワ

アン・デュ・トロワ
 

ヴィンセント・ミーセン/2016/デジタル/35分(ベルギー)
  
ヴィンセント・ミーセンの『アン・ドゥ・トロワ』は、英雄となったギー・ドゥボールが聖域化し革命の源としたシチュアシオニストの伝説に囚われることなく、代わりにこれまで無視されてきた、運動の歴史の違う一面を再考している。ベルギーのシチュアシオニスト、ラウル・ヴァネーゲムのアーカイブにおいてある歌詞が見つかったことが、この作品が生まれるきっかけとなった。それは1968年5月にコンゴのシチュアシオニストJoseph M’Belolo Ya M’Pikuが作曲したプロテスト・ソングの歌詞で、ヴィンセント・ミーセンは、コンゴの首都・キンシャサの若手音楽家やM’Beloloと共に、その歌を新たな演出で蘇らせた。この作品に携わるアーティストらによってなされる主題のアレンジの空間的広がりが、その断片化された映画表現から見て取れる。
クラブ“アン・ドゥ・トロワ”はコンゴの芸術の近代化において重要な役割を担ったフランコ・ルアンボ率いる世界的に有名なジャズ・オーケストラOK Jazzが以前いた場所であって、この色とりどりの迷宮のようなクラブは音楽的なルーツの意味でも完璧な舞台を提供している。本作はボピュラーでジャンル的にずば抜けてハイブリッドなコンゴのルンバと、危機に瀕している特有の建築と革新的な昔のレトリックを背景に、予期せぬナラティブとの出会いを音楽にもたらし、M’Beloloの歌のある一つの形をつくりだした。
 

ヴィンセント・ミーセン

1971年ボルチモア生まれ、ブリュッセル在住。西洋の近代化の発展におけるリアリズムと植民地主義のレトリックの影響に関心を持ち、様々なメディア(ビデオ、インスタレーション、版画、音楽など)を用いて、隠された言説と植民地の痕跡を蘇らせている。アーティストとしての創作活動とキュレーター的な活動の両方において、翻案操作の限界に疑問を投げかけ事実とフィクションの間に生まれる摩擦に言及し、思弁的言説の可能性を探っている。
 

上映日

東京:5/1 18:45, 5/5 18:45 プログラム K
京都:5/16 19:00 プログラムK
福岡:6/4 16:10 プログラムK
名古屋:6/25 19:20 プログラムK

 
english