プログラム

デイ・イズ・ダン <課外活動・投影による再構成 #2-#32>

デイ・イズ・ダン <課外活動・投影による再構成 #2-#32>
 

マイク・ケリー/2006-2009/デジタル/169分(アメリカ)
脚本:マイク・ケリー/音楽:マイク・ケリー、スコット・ベンゼル/振付:ケイト・フォーリー
提供:Electronic Arts Intermix (EAI)、Mike Kelly Foundation for the Arts
  
『デイ・イズ・ダン』は祝祭的な作品、ジャンルの壁をぶち壊す叙事詩だ。この型破りのミュージカル・シアター/バラエティ・レビュー的な世界では、ヴァンパイアや踊るゴスたち、ヒルビリーやパントマイムや悪魔がいっぺんに押し寄せてくる。上映時間2時間半を超える大騒ぎの劇場型スペクタクルの中で、全体として緩やかにつながり合う断片的なエピソードの数々が展開されてゆく。これらの映像はケリーの手がけた複合的プロジェクト<課外活動・投影による再構成>のパート2からパート32を成している。このプロジェクトではトラウマや虐待、抑圧された記憶などが、個人および大衆文化による経験を通して屈折的に映し出される。ソースとなる資料は、高校の卒業アルバムに掲載される一連の「課外活動」の写真、特にケリーが「社会的に認められた逸脱の儀式」と名づけたものが現れているイメージだ。ケリーはそれら既存の画像の周囲に、映像による語りを配置する。『デイ・イズ・ダン』において、そのような再現作業はケリーによって大胆に覆された「民俗芸能」的な形をとっている。登場するのは、自己啓発ヴァンパイア、不機嫌な悪鬼、悪魔の床屋。サタンをMCに繰り広げられるおどけた歌と踊り、芝居がかった場面など、大半のアクションはごく普通の高校の体育館と、森のような景色の中で起きている。
ケリーは記す。「このプロジェクトでは、特に決まったファイルの中から取り出した画像のみを限定して使った。つまり宗教的パフォーマンス、悪党、ダンス、ヒック(田舎者)とヒルビリー、ハロウィンとゴス、サタニック、パントマイム、乗馬大会。資料になった写真のほとんどが、衣装をつけて歌い踊る人たちのものだった。だから完成したテープは、ほぼミュージック・ビデオみたいになった。それで自分では『デイ・イズ・ダン』は断片化された長編ミュージカルのようなものだと考えている。この作品を見るのは、テレビのチャンネルをザッピングするのとなんとなく似た感じの経験だ。」
この再現的ビデオ作品は、もともと2005年にニューヨークのガーゴシアン・ギャラリーで行われた展示の中で発表されていた。野心的で大規模なこの展示は、映像とオブジェによるインスタレーション、写真、大道具や小道具、そして絵画から構成されていた。映像作品は視聴ステーションになっている25個のオブジェの内に設置された。ケリーは「私がやりたかったのは、空間化された映像のモンタージュのようなものを作ること、同時多発的でかつ互いにつながりのある諸場面からなる長編映画を、そのために設計された空間で上映することだった。」と書いている。
 

マイク・ケリー

アメリカ西海岸を拠点としたアーティスト、マイク・ケリーは現代アート界で最も挑発的かつ影響力の大きい人物のひとりだった。ケリーの特異な作品の体系は、パフォーマンス、インスタレーション、彫刻など多様な表現形式に及んでいる。彼の作品では緊迫した欲望や恐怖の領域とアメリカ的な日常生活に見られる社会病理的なものとが融合している。淡々としたユーモアを示しつつ、幼少期のおもちゃやキッチュなもの、見慣れた物品を使って、そこに破壊的な意味を与える。
長年にわたって、ケリーはパフォーマー、コラボレーター、そして制作者として数々のビデオ・プロジェクトに関わり、アートやパフォーマンス、映画や映像の分野の重要人物たちとコラボレーションしてきた。共作者には、ポール・マッカーシー、レイモンド・ペティボン、エリカ・ベックマン、トニー・オースラー、トニー・コンラッド、ボブ・フラナガンとシェリー・ローズ、そしてブルース&ノーマン・ヨネモトらがいる。パフォーマーとしてのケリーは、心理ドラマを感じさせる緊迫感を表現した。彼が共同で制作したビデオ・プロジェクトでは、いかにもアメリカ的な風景を、皮肉を込めつつポップカルチャーの断片を散りばめながら映し出している。
マイク・ケリーは1954年ミシガン州デトロイト生まれ、2012年に死去。ミシガン大学で美術学士号を、カリフォルニア芸術大学で修士号を取得した。2013年、アムステルダム市立美術館が史上最多のケリー作品を集めた展示を開催した。同展はその後、パリのポンピドゥーセンター、ニューヨークのMoMA PS1、ロサンゼルス現代美術館を巡回した。1993年にはニューヨークのホイットニー美術館で回顧展が企画され、ロサンゼルス・カウンティ美術館(LACMA)、ミュンヘンのハウス・デア・クンストでも開催された。さらに1997年の回顧展はスペインのバルセロナ現代美術館を皮切りに、スウェーデンのマルメ現代美術館、オランダ・アイントホーヴェンのファン・アッベ市立美術館を巡回。2010年にケリーがロンドンを拠点とする芸術団体アートエンジェルの協力のもと作り上げた常設のパブリックアート『モバイル・ホームステッド』は、デトロイト現代美術館の敷地内に展示されている。
 

上映日

東京:5/1 20:20, 5/5 20:20 プログラム L
京都:5/14 11:00 プログラム L
横浜:7/18 16:00 プログラム L

 
english