プログラム

ニューフィルム・インターナショナル【海外招待部門】

ポップ・カルチャーと映像表現

1980年代、ビデオという安価で複製可能な新たなメディアの登場は、多くのアーティストの登場や新しい表現の道を拓いた。彼らは過剰な扮装や、複製メディアの特性を生かしたスクラッチ・ビデオ的な手法でポップ・カルチャーをチープかつキッチュに引用し、既存の消費メディアの話法やそこに隠されたメッセージを批評的にあぶり出した。それは90年代のアートに大きな影響を与え、またポップ・カルチャーそれ自体にもフィードバックされている。
特集プログラム「ディス・イズ・ナウ ポストパンクのフィルムとビデオ」では、特にパンク以後のこのようなイギリスの映像作品に光を当てる。
その柔軟なポップ・アート的感覚で美術界において大きな評価を得ているマーク・レッキーは、自分こそがポップ・カルチャーの産物であるという宣言を、ポスト・インターネットのマッシュアップ作品『フィオルッチ・メイド・ミー・ハードコア』(1999)、『ドリーム・イングリシュ・キッド』(2015)で明快に示す。
80年代以降のアメリカに登場した最も重要なアーティストの一人、マイク・ケリーは映像大作『デイ・イズ・ダン』で、ポップ・カルチャーの民俗学的な考察を行い、そこに儀式的な集団的治療の機能を見い出した。
 

ポートレートの臨界点

ザルツブルグのアパートに引きこもるかつての映画スター、ヘルムート・バーガー。その強烈な被写体であるバーガーと、監督との倒錯した闘争の記録である『俳優、ヘルムート・バーガー』は、ジョン・ウォーターズが「2015年の最低にして最高傑作」と呼んだ心して見るべきポートレート。昨年『服従』を発表し、改めて物議を醸した仏の問題作家ミシェル・ウエルベックとの一筋縄ではいかない共犯的映画づくりで謎めいたユーモアを醸しだす『ミシェル・ウェルベック誘拐事件』。台湾、中国、日本のナショナリストたちと、それぞれの国から尖閣諸島をめざし、ナショナリストとは何かを浮かび上がらせようとして自分の中に巣食うナショナリズムと対峙することになる『テラ・ヌリウス:ナショナリストになる方法』。様々なアプローチで被写体の真の姿を捉えようとする問題作3本を上映する。
 

 
 
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