実験映画作家やビデオ・アーティストたちの映像表現の場として1971年にアンダーグラウンド・センターとして設立されたイメージフォーラム。1987年、イメージフォーラムはそれまで12回にわたって開催していた「実験映画祭」を発展したかたちで、公募コンペティションを加え、あらたな映画祭「イメージフォーラム・フェスティバル」をスタートした。
「現代は、通信産業のめざましい発達にともなって、局地的な現象といえども瞬時にして全地球的スケールで位置づけられています。それがときには情報構造の画一化を招きましましたが、いっぽうで多様化も促進しました。」記念すべき第1回目のカタログの挨拶文ではそう述べられている。それは30年経った今でも変わらない状況であると言えるかもしれない。この30年間の大きな変化としては、フィルムメディアからデジタルメディアへの転換があげられるが、個人表現全般に及ぼしたインパクトを考えるならば、インターネットやSNSの普及は計り知れないものがある。しかしそれは個人の表現の領域を拡大し「多様化を促進した」ように見えるいっぽう、「情報構造の画一化」や生々しい表現に対する疎外も進んでいるように見える。
イメージフォーラム・フェスティバルにおいては、そうした画一化に対抗し逸脱する存在として連綿と続く個人の映像表現にスポットを当ててきた。なぜなら規格化されたものにはない、生の表現こそが社会社会や個々人の体験に及ぼす影響を持ちうると考えるからである。また、表現の場がネットでこれだけ十分に保証されている現在においても、新たな映像作家は登場し、作品も生まれている。その意味を我々は見逃すわけにはいかない。
「特集:ユニーク・エンカウンターズ イメージフォーラム・フェスティバル30回記念回顧展」では、フェスティバルの過去の公募部門の受賞作を中心に10プログラム35作品をセレクトし、これからの作家による映像芸術表現のありかたについて考える。
1987年にスタートしたイメージフォーラム・フェスティバルは今年で30回目を迎える。公募で行なわれるコンペティション部門の受賞作を中心にセレクトし、その30年を振り返る。個人の手による映像表現は、消費として片付けることの出来ない唯一的な出会いを観る者にもたらす。その遭遇は見るものへのインスピレーションであり、他者というさらなる新たなる世界に没入するための扉なのだ。貴重な8ミリ・フィルム作品のほとんどをオリジナル原版にて上映。作家来場Q&Aも開催予定!