プログラム

ニューフィルム・インターナショナル【海外招待部門】

映画が誕生して120年、その間映像に関連する様々なテクノロジーが誕生し、映像をよりアクセスしやすく身近なものにしようという試みがなされてきた。暗闇が無ければ立ち現れなかった映像は、バックライトのパネルによって明るい昼間でも見る事が出来るようなものになり、小型化することによって、持ち運びながら自分の手のひらの中で再生できるようにもなった。また、通信技術の発展によって、いつでも好きな時間に、あらゆる映像を呼び出す事が出来るシステムが作り上げられた。この120年の歴史は、映像を真っ暗な闇と静かな部屋を必要とする“映画”という装置から解放しようとしてきた歴史とも言えるだろう。“映画”という装置には、現在映像テクノロジーが容易に提供できる利便性は無く、高度に効率主義的な現代社会においては、アクセスに手間と時間のかかる、むしろ時代遅れなものだとさえ言える。しかし現在においても映画の鑑賞は大衆の娯楽として重要な位置を保ち、映画祭はそれぞれの開催地域で重要な文化的イベントとして大きな注目を浴び続けている。また、“映画”というメディアを起点とし、それを 映画表現自体を推し進め拡げようとする作家も新たに登場し続けているのも事実だ。我々が暗闇に灯される光に引き寄せられるのは必然なのだろうか。かつてペーター・クーベルカのフリッカー映画『アーヌルフ・ライナー』を初めて観た時、プロジェクターが投射する光の明滅がスクリーンに反射し、周りの観客の影を浮かび上がらせ、映画館の部屋全体が光に満たされることが強烈な体験として感じた。まさにクーベルカの言う「いま、ここ」の感覚が立ち現れたかのようだった。人はなぜ映画館に集まるのか。映画の何が人を寄せ付けるのだろうか。イメージフォーラム・フェスティバル2015 では、暗闇の中の光の明滅としての映画の本源的な力を、多種多様な映画的な制作アプローチを集め検証する。

イメージフォーラム・フェスティバル ディレクター 山下宏洋

 

 
 

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