プログラム

特集【オプティカル・ドリームス】

“ジャックへ。光だ!”映像作家ポール・シャリッツは、1967年に友人へと宛てたメッセージでこう書いています。IFF2015の特集「オプティカル・ドリームス」では、アブストラクト映画と言われる抽象的な作品を通じて、日常生活のあらゆるレベルで映像に囲まれて生きる現在の我々に、改めて映像が持つ力や、未だ探求されていない映画の可能性について問い直します。光は映写機からスクリーンに投影され、観客の目に届きその心の中で像を結びます。「純粋な色とは何か?私は、自分の色があなたの色ではないと知っている。同じテレビを見ていたとしても、2つの色は決して同じではない。見方で中身は変わるのだ」(ポール・シャリッツ)。緑、赤、黄色、ピンク…原色のフレームを1コマずつ連ねることで、強力な色彩の明滅を生み出すポール・シャリッツの作品。50年近く前に制作されながら、 その映画体験のインパクトは、現在も全く色あせることがありません。その作品は、映画が持つメディアとしての原初的な力を、ほとんどフィジカルと言ってもいい位の説得力で我々に認識させてくれます。シャリッツは観客の体験を、映画そのものと一致させようと試みたのです。観客は、スクリーンを通してある意味自分自身を夢見るのかもしれません。
 
オランダの映像作家ヨースト・レクフェルトは、シャリッツの系譜における最新の作家とも言えます。シュトックハウゼンやクセナキスといった電子音楽家への興味から、やがて映像制作を始めたレクフェルトは、人間と科学技術の関わりや、ロボット工学へとその興味の幅を拡大していきます。機械を通して、人間と人間が作り上げた世界を理解しようとする、その試行のプロセス。それを観客と共有しようと一連の映像作品を制作しています。哲学者スラヴォイ・ジジェクは『スラヴォイ・ジジェクの倒錯的イデオロギー・ガイド』の中で、いかに映像が人々の欲望を定義し、信念や行動を形成していくかを、有名映画の抜粋を通してユーモラスに語ります。「我々は自分自身の夢に責任がある。」と述べるジジェクは、映画を我々の心を映し出す鏡として分析するのです。ほぼ全てに近い作品が日本初公開、これを見逃すと次はいつの上映になるのか分からない、貴重な映像作品が満載の海外招待部門作品と特集「オプティカル・ドリームス」。是非お見逃し無く!
  

 
 

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