大賞作家インタビュー
『THE 梅屋商店』
渡辺亮
–大賞おめでとうございます。大勢の観客の前で作品が上映されていかがでしたか?
ありがとうございます。(東京会場の)パークタワーホールは 大画面だし音もいいし大勢の前だし、まずはとにかく緊張しました。 また、同じEプログラムの作家の方々がすごい顔ぶれだったので 一緒に上映されたこと自体が嬉しかったです。
–『THE 梅屋商店』は初作品ということですが、映像作品を作ろうと思ったきっかけはなんですか?
きっかけというきっかけは特にないのですが、 自分で作品を作ってみたいと昔から思っていて、学校行事や旅行で、なぜかカメラ係を任せられることが多く、漠然と映像かな~と。通っている大学が渋谷だったので、渋谷付近の映像学校を探していたら、イメージフォーラム映像研究所を見つけて、映像制作未経験でも大丈夫だと思い入学を決めました。
イメージフォーラム映像研究所の最初の授業で『SPACY』(伊藤高志/1981)と『アートマン』(松本俊夫/1975)を観て、うわぁ、こういうのあるんだ! とびっくりして…。 それから松本俊夫さん、伊藤高志さんの作品を何回も観て研究していた時期がありました。 伊藤高志さんの『THUNDER』『GHOST』『GRIM』などプロジェクターを使う作品や 松本俊夫さんの『西陣』『色即是空』などが『THE 梅屋商店』のヒントになった作品です。 あとは、ヤン・シュヴァンクマイエルや塚本晋也さんの作品にも影響を受けています。
–なぜ魚加工工場をコマ撮りで撮影しようと思ったのですか?
研究所でコマ撮りの手法を教えてもらい、自分もこういったことをやってみたいと思ったのが始まりです。 そのあとに幼少の記憶が再現できるんじゃないかと思い、作品にしようと決めました。というのは、この魚加工工場は僕の実家なんです。幼少の頃から工場で手伝いをしたり、また、誰もいない夜の工場でボール遊びをしたりしていました。 その頃の記憶を辿ると、工場全体から魚の怨念みたいなものを感じていて、夜は機械や台車やフォークリフトが動いているという不思議な感覚がありました。その頃のイメージを視覚化するためにコマ撮りという手法がつかえるんじゃないかと。
–撮影は大変だったとか。
フォークリフトは初めて操縦したので、苦労しました。でもだんだん慣れてきて最終的には自由自在に操縦出来るようになりました。 大人になっても夜の工場は不気味で怖かったです。急に冷凍庫などの機械の音がなったりするのでびくびくしながら撮影してました。なのでイヤホンをつけて明るい曲を聴きながら撮影したりもしました。
–映画のサウンドがリズミカルで楽しい雰囲気になったのはそういうことが理由なんですか?
もしかしたらそうなのかも知れないですが(笑)、幼少の頃のただ怖いだけではない不思議な感覚を再現したかったんで、ホラーのイメージだけではなく、少しコミカルな動きの要素も取り入れたかったんです。それでリズムのある音が必要になった。
–作品タイトルもどこかコミカルですよね。
梅屋商店は屋号です。 工場の看板に梅屋商店の前に「サ」とういう文字があるんですが、 このサは、梅屋商店の別名みたいなもので、各水産加工業者についているものです。 梅屋商店の創始者である曾祖父の名前が佐次郎だからサになったらしいです。「サ 梅屋商店」をもじって『THE 梅屋商店』というタイトルにしました。
–ご家族や工場の方がご覧になったときの反応は?
従業員にはまだ見せていないです。親にも途中の段階では見せていますが、完成したものはまだです。 反応は微妙でした。なんだこれ? みたいな(笑)
いつか工場で上映会しなくちゃいけないのかもしれません。
2011.5.27
『THE 梅屋商店』作品ページはこちら
This entry was posted on 水曜日, 6月 8th, 2011 at 3:05 PM
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